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漫才のツッコミにおける感情の使い方

ツッコミという役の基本的な立場は、聞き手であり観客の代弁者です。
ボケの異常性を浮かび上がらせつつ客に笑うタイミングを与えるのが主な仕事になります。
ボケよりはるかに明確で自由度の低いこの役割において個性を出すために一番手っ取り早いのが、感情の乗せ方の工夫です。
ボケに対して怒る、呆れる、戸惑うなどのリアクションをツッコミのフレーズや温度に反映させることで、緩急をつけたり次の展開を引き出したりすることができます。

その中でも、最もメジャーかつ強い力を持つのが怒りです。
漫才に迫力やスピード、アドリブ感を容易にもたらし、声の音量でピークを導入することも自在にできます。
これ以上に便利なツールは他にありません。
同時にこの手法は昔から非常に多くの漫才師が用いてきたために、今ではほぼ100点満点のものができあがってしまいました。
漫才という演芸は、怒りから卒業せねばならない時期にきているのです。


そして、次なるツールとしてふさわしいものは戸惑いであると僕は考えています。
これを用いている現役漫才師の代表格は、スリムクラブとさらば青春の光だと思います。
双方がコント師であることからも分かるように、もともと漫才には向いていない感情表現です。
ボケ一つ一つにツッコミがいちいち戸惑っていてはテンポが悪くなり手数を封じられる上に、演技幅が狭くピークを作りにくいという大きな弱点もあります。
この二組はそれらを別々の手法で克服しています。

まず、スリムクラブは大前提としてテンポをすべて捨てることから始まります。
それを逆手にとって、ボケツッコミではなく狂人と常識人という役割をリアルに演じて間を生かすというテクニックを用いているのです。
そして、緩急はボケの質のみで上手くコントロールしています。
さらば青春の光はボケ自体が非常に奇特であることがポイントです。
なんとつっこんでいいか分からない絶妙にぶっとんだボケに対して、ツッコミが絶句せざるを得ない状況を作り出します。
そこからはツッコミではなく相づちやリアクションのみで戸惑いを表現することでテンポの良さを出し、しばらく同じボケを重ねてからツッコミを爆発させることでピークを演出しています。

これらはコントから輸入されたものであり、非常に特殊で高度な台本の上に成り立っています。
また、内間さんや森田さんのような戸惑いの天才がいてこそ実現する漫才でもあります。


以上のような高い難易度をクリアできる漫才師は、おそらくわずかしかいないでしょう。
しかし、彼らが作るような他と一線を画す漫才は革命を起こす可能性を秘めているはずです。
この種の天才が天下をとる日はいつか必ずやってくると僕は思います。

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03 : 31 : 40 | お笑い | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑

漫才の普遍性と深み

一般的に「優秀な漫才」とみなされるための必要条件の一つに、客層を選ばない普遍性があります。
誰にでも分かる言葉で、誰にでも分かる面白さをしゃべりだけで提供すること。
これが漫才師の目指す理想であることは、今も昔も変わりません。
しかし、漫才という長い歴史をもつ演芸においてこの条件を満たす可能性のあるものはほぼ出尽くしたと言ってもいい状態なのです。
結局のところ理想は理想でしかありません。
人それぞれが好きなものを好きなだけ、という時代背景の中でお笑いはターゲットを絞ったライブを主軸とし分裂していくことになるのだろうと暗いことも考えてしまいます。

一方で、そんな現代だからこそ生まれたポジティブな要素も存在します。
それは、意図的にある程度の客を切り捨てることでボケに深みを持たせる技術です。
この点に関しては、正当派でなおかつボケを分解してもクオリティが落ちない学天即のネタを抜粋して考えていきたいと思います。

・ 「ビリオンセラーや」「十億!?」
・ 「真ん中梅干でまわりほうれん草」「バングラディッシュやんか」
・ 「ここまではエピローグ」「プロローグやろ」

いずれも僕がお腹が痛くなるほど笑ったボケです。
どれも客にある程度の知識を要求していることが分かると思います。
知らなければ笑いようがない以上、上述した普遍性を伴っていません。
しかし、現実にはこれらは単体ボケとして異常なほどの破壊力を持っています。
これは、深みに由来する力です。

ビリオンという英単語やバングラディッシュの国旗を知っている人でも、その記憶は脳の最奥に近いところにあるのが普通です。
ボケた瞬間はなんのことだか分からない。
そこにツッコミが正解を与えるという過程によって、快感にも似た笑いが生まれることになるのです。
長らく触れていなかった脳の隅っこをくすぐるという高尚な技術が使われています。

三つ目においてはもうひとつ巧妙な仕組みがあります。
言葉自体を知っている人でも、プロローグとエピローグという単語の区別を意識している人は少ないと思われます。
つまり、ボケた瞬間どころかツッコミが指摘するまで全く気付かないというレベルのギリギリのボケなのです。
ツッコミによってボケに気付くというプロセスは、完璧な不意打ちを実現しています。

客の一部を完全に置いていくことで使えるこの手法は、安易に用いていいものではありません。
しかし、ツカミやたたみかけのきっかけなど勝負に出るときの切り札には適しています。


こういうところにこそ、正当派しゃべくり漫才が生き残る道があるのではないでしょうか。

23 : 20 : 08 | お笑い | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑

THE MANZAI 2014 優勝予想

今年のTHE MANZAI決勝進出者が決まりました。

目玉は何と言っても馬鹿よ貴方は!
アンダーグラウンド芸人が一気にキラッキラの舞台に上がることになりました。
このスピード出世は予想外でした。
狂気からポップへの絶妙な寄せが素晴らしい。
長所だけを残してうまいこと万人ウケに転向しましたね。

全体としては、本命不在の中で実力派の人たちが横一線という構図に。
良質な技術戦が展開される予感がします。

そして、ワイルドカードがすごく楽しそう。
特にムニムニヤエバ!
無茶苦茶に荒らしてきてください!


ここからグループ毎の予想。

<Aグループ>
トップからの勝ち抜けはかなり困難だと思います。
それは2丁拳銃がどうこうではなくて。
他三組が完全に外した場合だけありえますが、期待は薄いですね。
基本的に正当派のボケ連打型のブロックなので、大事なのは打率です。
エレファントジョンはボケのくだらなさ自体をボケにしますから、そこをマイナス判定される可能性があります。
アキナはボケの外し方が大きいので、決勝でハマるかどうかは分からない。
となると、常に85点以上をとれる磁石が有利だと思います。

<Bグループ>
ここは三つの中で一番の技術勝負になるかと。
学天即が技術一本の漫才師である以上、それは避けられません。
トレンディエンジェルはかなり苦戦することが予想されます。
囲碁将棋が今年に限って爆弾ネタを持ってきたおかげで荒れることは間違いないでしょう。
馬鹿よ貴方はと連続でハマったら、いかに学天即でも抑えようがありません。
ただ、今回の囲碁将棋は馬鹿馬鹿しさを軸にしているので、ボケの質に裏打ちされた馬鹿よ貴方はのほうが若干ながら安定していると思います。
審査員心理を加味すると学天即があっさり勝ってしまうことも考えられますが。

<Cグループ>
ワイルドカードがある以上、なんとも言いいがたいものがあります。
単純ですが、華大有利と見て問題ないのではないでしょうか。
みんなが華大のこと好き過ぎます。


この年末になって、マキシマムパーパーサム、ヒカリゴケ、ロシアンモンキーと複数の優秀な漫才師が解散してしまいました。
この大会では今一度、漫才という演芸のパワーを見せて新たな漫才師を生むタネをばらまいて欲しいと思います。

優勝予想は学天即です。

02 : 10 : 49 | お笑い | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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